児童養護施設など、児童福祉施設に子どもを預ける際には費用が発生します。「どのくらいのお金がかかるのか」「支払いが難しい場合はどうすればいいのか」など、保護者の方が抱える不安は大きいものです。
この記事では、児童養護施設の入所費用の仕組みから、世帯別の具体的な金額シミュレーション、減免・助成制度の活用方法まで詳しく解説します。
この記事では、WEBで公開されている横浜市の条例(令和元年7月1日以降適用)に基づいて、児童養護施設の入所費用を詳しく解説しています。
他の自治体では金額が異なる可能性があります。あくまで参考に留め、最新の費用については、必ずお住まいの自治体または児童相談所にお問い合わせください。
児童養護施設の入所費用の基本

費用は市町村民税所得割で決まる仕組み
令和元年7月1日以降、児童養護施設の入所費用は、前年の市町村民税所得割額によって決定されます。これは児童福祉法第56条に基づく費用徴収制度です。
市町村民税所得割とは、市区町村に納める住民税のうち、所得に応じて課税される部分のことです。毎年6月頃に届く「住民税決定通知書」の「市区町村民税所得割額」から確認できます。
階層区分と月額費用(神奈川県横浜市の例)
横浜市の条例では、市町村民税所得割額に応じて以下のように階層が分かれています。
| 目安年収 (生計者の給与収入) | 階層 | 市町村民税 所得割額(年額) | 月額費用 (児童養護施設) |
|---|---|---|---|
| 生活保護受給世帯 | 生活保護 | – | 0円 |
| ~約100万円 | 非課税 | 0円 | 0円 |
| 約100~150万円 | 均等割のみ | – | 0円 |
| 約150~180万円 | D1 | 9,000円以下 | 0円 |
| 約180~230万円 | D2 | 9,001円~27,000円 | 2,700円 |
| 約230~300万円 | D3 | 27,001円~57,000円 | 6,700円 |
| 約300~360万円 | D4 | 57,001円~93,000円 | 9,300円 |
| 約360~450万円 | D5 | 93,001円~177,300円 | 14,500円 |
| 約450~520万円 | D6 | 177,301円~258,100円 | 20,600円 |
| 約520~600万円 | D7 | 258,101円~348,100円 | 27,600円 |
| 約600~700万円 | D8 | 348,101円~456,100円 | 35,700円 |
| 約700~800万円 | D9 | 456,101円~583,200円 | 45,000円 |
| 約800~900万円 | D10 | 583,201円~704,000円 | 55,500円 |
| 約900~1,000万円 | D11 | 704,001円~852,000円 | 67,300円 |
| 約1,000~1,150万円 | D12 | 852,001円~1,044,000円 | 79,000円 |
| 約1,150~1,300万円 | D13 | 1,044,001円~1,225,500円 | 91,600円 |
| 約1,300~1,450万円 | D14 | 1,225,501円~1,426,500円 | 105,100円 |
| 約1,450万円以上 | D15 | 1,426,501円以上 | 119,800円 |
※「横浜市児童福祉施設入所者等の措置費等の徴収に関する規則 別表第1」を参考に作成
重要:横浜市では最高額が119,800円/月(D15階層)まで設定されています。
これは高所得世帯向けの階層です。
2人目以降の児童は10分の1の費用
同じ世帯から2人以上の児童が入所している場合、2人目以降の児童については費用が10分の1に軽減されます。これは大きな負担軽減になります。
具体例:年収500万円のひとり親世帯の場合
- 1人目:月額20,600円
- 2人目:月額2,060円
- 合計:月額22,660円
【世帯別】児童養護施設の月額費用シミュレーション
ここでは、横浜市の基準に基づいて、具体的にどのくらいの費用がかかるのか、世帯タイプ別にシミュレーションします。世帯構成によって適用される控除が異なるため、同じ年収でも支払う費用に大きな差が出ます。

パターン①:ひとり親世帯の費用
ひとり親控除(35万円)が適用されるため、配偶者控除よりやや控除額が少なく、夫婦世帯(専業)と比べると市町村民税所得割がやや高くなります。
| 年収 | 所得割(年額) | 階層 | 月額費用 |
|---|---|---|---|
| 103万円以下 | 0円 | 非課税 | 0円 |
| 200万円 | 約17,500円 | D2 | 2,700円 |
| 250万円 | 約45,250円 | D3 | 6,700円 |
| 300万円 | 約73,000円 | D4 | 9,300円 |
| 350万円 | 約100,750円 | D5 | 14,500円 |
| 400万円 | 約132,500円 | D5 | 14,500円 |
| 450万円 | 約165,250円 | D5 | 14,500円 |
| 500万円 | 約198,000円 | D6 | 20,600円 |
| 600万円 | 約266,000円 | D7 | 27,600円 |
| 700万円 | 約335,500円 | D7 | 27,600円 |
| 800万円 | 約411,000円 | D8 | 35,700円 |
| 900万円 | 約491,500円 | D9 | 45,000円 |
| 1,000万円 | 約577,000円 | D9 | 45,000円 |
パターン②:夫婦世帯(専業主婦/主夫)の費用
配偶者控除(38万円)が適用されるため、ひとり親世帯より控除額が3万円多く、同じ年収でも市町村民税所得割がやや安くなります。
| 年収 | 所得割(年額) | 階層 | 月額費用 |
|---|---|---|---|
| 103万円以下 | 0円 | 非課税 | 0円 |
| 200万円 | 約14,500円 | D2 | 2,700円 |
| 250万円 | 約42,250円 | D3 | 6,700円 |
| 300万円 | 約70,000円 | D4 | 9,300円 |
| 350万円 | 約97,750円 | D5 | 14,500円 |
| 400万円 | 約129,500円 | D5 | 14,500円 |
| 450万円 | 約162,250円 | D5 | 14,500円 |
| 500万円 | 約195,000円 | D6 | 20,600円 |
| 600万円 | 約263,000円 | D7 | 27,600円 |
| 700万円 | 約332,500円 | D7 | 27,600円 |
| 800万円 | 約408,000円 | D8 | 35,700円 |
| 900万円 | 約488,500円 | D9 | 45,000円 |
| 1,000万円 | 約574,000円 | D9 | 45,000円 |
パターン③:夫婦共働き世帯の費用
夫婦それぞれが収入を得ている場合、市町村民税所得割は個人ごとに算定されます。
そのため、施設利用料の算定において「主たる生計者(収入が多い方)の市町村民税所得割額」を基準とする制度では、
収入が一方に集中している世帯と比べて、共働き世帯の方が主たる生計者の所得割額が低くなり、
結果として負担区分が低くなる場合があります。
計算条件:世帯年収を夫婦で半分ずつ稼いでいる想定。例えば世帯年収600万円の場合、夫300万円・妻300万円で計算。配偶者控除は適用されません。
| 世帯年収 | 各自の年収 | 所得割(年額/1人) | 階層 | 月額費用 |
|---|---|---|---|---|
| 200万円 | 各100万円 | 0円 | 非課税 | 0円 |
| 250万円 | 各125万円 | 約1,375円 | D1 | 0円 |
| 300万円 | 各150万円 | 約22,750円 | D2 | 2,700円 |
| 350万円 | 各175万円 | 約39,125円 | D3 | 6,700円 |
| 400万円 | 各200万円 | 約52,500円 | D3 | 6,700円 |
| 450万円 | 各225万円 | 約66,375円 | D4 | 9,300円 |
| 500万円 | 各250万円 | 約80,250円 | D4 | 9,300円 |
| 600万円 | 各300万円 | 約108,000円 | D5 | 14,500円 |
| 700万円 | 各350万円 | 約135,750円 | D5 | 14,500円 |
| 800万円 | 各400万円 | 約167,500円 | D5 | 14,500円 |
| 900万円 | 各450万円 | 約200,387円 | D6 | 20,600円 |
| 1,000万円 | 各500万円 | 約234,775円 | D6 | 20,600円 |
他の児童福祉施設との費用比較

児童養護施設以外にも、児童心理治療施設や児童自立支援施設などがあります。横浜市の条例では、これらの施設の通所部では費用が約半分に設定されています。
| 施設タイプ | 主な対象 | 月額費用の例 (年収400万円の場合) |
|---|---|---|
| 児童養護施設 | 虐待・経済的事情など | 14,500円 |
| 児童心理治療施設(通所部) | 心理的問題のケア | 約7,200円 |
※横浜市の条例に基づく概算です。実際の金額は自治体により異なります。
利用できる減額・助成制度

市区町村独自の助成制度
多くの自治体では、国の基準とは別に独自の助成制度を設けています。例えば:
- 低所得世帯への追加減免
- ひとり親世帯への特別助成
- 生活保護世帯の費用免除
これらは自治体によって大きく異なるため、お住まいの市区町村の福祉課に必ず確認しましょう。
生活福祉資金貸付制度
社会福祉協議会が実施する「生活福祉資金貸付制度」では、低所得世帯や障害者世帯、高齢者世帯を対象に、生活費や一時的な資金の貸付を行っています。
- 教育支援資金:子どもの教育に必要な費用
- 福祉費:生活を立て直すために一時的に必要な費用
連帯保証人がいれば無利子、いない場合でも年1.5%の低金利で借りることができます。
費用減免の申請方法
費用の支払いが困難な場合、以下の手順で減免を申請できます。
- 児童相談所または市区町村窓口に相談
- 収入状況を示す書類を提出(源泉徴収票、給与明細、住民税決定通知書など)
- 減免申請書を記入・提出
- 審査結果の通知を待つ(通常1~2ヶ月)
収入が急激に減少した場合や、災害などの特別な事情がある場合は、特に考慮されやすくなります。
児童手当の支給について

施設入所中は施設が受給
児童手当は、通常は保護者に支給されますが、施設に入所している間は施設が受給者となります。つまり、保護者には支給されません。
| 状況 | 児童手当の受給者 |
|---|---|
| 入所前 | 保護者 ○ |
| 入所中 | 施設 ○ / 保護者 × |
| 退所後 | 保護者 ○ |
費用の支払いが困難な場合の対処法

すぐに相談することが重要
費用の支払いが難しい場合、絶対に一人で抱え込まず、すぐに相談してください。支払いを滞納すると、後々トラブルになる可能性があります。
相談先一覧
| 相談先 | 連絡方法 | 内容 |
|---|---|---|
| 児童相談所 | 電話:189(いちはやく) 24時間365日対応 | 費用相談、減免申請、その他児童に関する相談全般 |
| 市区町村福祉課 | お住まいの自治体窓口 平日8:30~17:00(一般的) | 費用減免、助成制度の案内 |
| 社会福祉協議会 | 各地域の社協窓口 | 生活福祉資金貸付、生活相談 |
| 法テラス | 電話:0570-078374 平日9:00~21:00 土曜9:00~17:00 | 法的トラブル、無料法律相談の案内 |
支払い計画の調整
一括での支払いが困難な場合、分割払いなどの支払い計画を相談できる場合があります。自治体によって対応は異なりますが、誠実に相談すれば柔軟に対応してもらえることが多いです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 費用はいつから発生しますか?支払い方法は何ですか?
A. 入所した月から費用が発生します。日割り計算はされず、月の途中で入所しても1ヶ月分の費用がかかります。
入所費用は、当月分を翌々月の末日までに支払うのが一般的です。
支払い例:
4月分の費用 → 6月末までに支払い
5月分の費用 → 7月末までに支払い
支払い方法は自治体によって異なりますが、多くの場合は「銀行振込」「口座振替」「納付書による支払い」のいずれかです。
Q2. 途中で収入が変わった場合、費用は変わりますか?
A. 費用は前年の市町村民税所得割額に基づいて決定されるため、年度の途中で収入が変わっても、その年度の費用は変わりません。
翌年度から新しい収入に基づいた費用に変更されます。ただし、失業など大きな収入減があった場合は、別途減免申請が可能です。
Q3. 自営業の場合はどうなりますか?
A. 自営業の方も、前年の確定申告で計算された所得に基づく市町村民税所得割額で費用が決定されます。
確定申告書の控えと住民税決定通知書を用意しておくとスムーズです。
Q4. 退所する時に返金はありますか?
A. 月の途中で退所しても、その月の費用は全額かかります。日割り計算での返金はありません。
Q5. 祖父母が扶養義務者の場合は?
A. 扶養義務者(祖父母など)がいる場合、その方の収入も合算して費用が決定されることがあります。詳しくは児童相談所に確認してください。
Q6. 費用を支払わないとどうなりますか?
A. 滞納が続くと、最終的には法的措置が取られる可能性があります。
支払いが困難な場合は、必ず事前に相談してください。
Q7. 横浜市以外に住んでいる場合は?
A. この記事は横浜市の条例を元にしていますが、他の自治体でも基本的な仕組みは同じです。ただし、階層区分や金額は自治体によって異なるため、お住まいの自治体に必ず確認してください。
まとめ
児童養護施設の入所費用は、前年の市町村民税所得割額に基づいて決定されます。横浜市の例では、世帯構成や収入状況によって大きく異なり、年収400万円程度の場合で月額6,700円~14,500円程度が目安です。
この記事の重要ポイント
- 費用は前年の市町村民税所得割額で決まる(令和元年7月以降)
- 横浜市では15段階の階層区分があり、最高119,800円/月
- 世帯構成(ひとり親・専業・共働き)で費用が大きく変わる
- 2人目以降は10分の1に軽減
- 減免制度や助成金が利用できる
- 支払いが困難な場合は必ず相談する
📌 再度の確認
この記事は横浜市の条例を例にしています。他の自治体では階層区分や金額が異なる可能性があります。
最新の費用や制度については、必ずお住まいの自治体または児童相談所にお問い合わせください。
費用面での不安は大きいと思いますが、様々な支援制度が用意されています。一人で悩まず、まずは児童相談所(189)に電話してみてください。専門の相談員が親身になって対応してくれます。


